2021/02/09

表面分析技術のご紹介(第2回)

~ 表面分析の専門家がトータルサポート ~

 シオノギファーマ株式会社(以下、シオノギファーマ)では、走査型電子顕微鏡(以下、SEMと略す)、電子線マイクロアナライザ(以下、EPMAと略す)及び顕微ユニット付きフーリエ変換赤外分光光度計(以下、顕微FT-IRと略す)の3機種を駆使することで、微小領域の形態観察や組成分析など、R&Dや苦情調査に有用な、幅広いソリューションを提供しております。

 2回シリーズの第1回は、シオノギファーマにおける表面分析技術について紹介いたしました(https://www.shionogi-ph.co.jp/information/news_letter/2021/01/20210126_1.html)。第2回は、計6件の分析事例を紹介いたします。

分析事例

 医薬品の開発・製造では、様々な場面で形態観察や組成分析が必要となります。その解析手段の1つとして表面分析を用いて研究開発・品質評価・異物調査に対応しております。特に異物調査は、混入源の解明により、早期の対策により再発を防止し、製品品質の向上に貢献できるものと考えております。

 ここでは、表面観察、異物調査、品質評価の分析事例をご紹介します。

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 SEMにより用時溶解型注射剤の凍結乾燥ケーキ(断面)の形態観察を行いました。

 製造過程で発見された凍結乾燥品の異常品と正常品の凍結乾燥ケーキの形態を比較しました。

 正常品は上層・中間層・下層のいずれも均一なハニカム構造が形成されています。一方、異常品は、特に中間層・下層において、正常品と異なる形態であることがわかりました。

 このように凍結乾燥ケーキの形態の違いは溶解性や安定性への影響が考えられ、断面観察から製造品質の評価や製造処方の策定を行うための有用な情報となりました。

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 錠剤表面に付着した異物の調査を行い、付着異物と印刷インキのSEMによる形態観察から付着異物は印刷インキと似た形状とわかりました。

 さらにEPMAによる元素分析により付着異物から、C、Al、Ti、Cl、S、O、Ca、Naの元素を検出しました。ここで付着の可能性が考えられる印刷インキの元素分析を実施した結果、C、Al、Ti、Cl、S、O、Ca、Naと付着異物と同じ元素類が検出され、その組成比が近似していることから、付着異物は、製造工程で発生した印刷インキの汚れと判断することができました。

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 SPシート表面に付着した異物の市場クレーム調査を行いました。

 SEMによる形態観察で異物を確認したところ、円盤状の粒子が積層凝集状態で付着していることがわかりました。

さらにEPMAによる元素分析により付着異物から、C、K、S、Fe、Cl、N、O、P、Na、Ca、Mgの元素を検出しました。ここで付着の可能性が考えられる血液の元素分析を実施した結果、C、K、S、Fe、Cl、N、O、P、Na、Ca、Mgの元素類が検出され、付着異物と同じ元素が検出されました。以上の結果、付着異物は血液であることが判明し、製品出荷後の分包時もしくはSPシート取扱い時に付着したものと判断しました。

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 注射製剤に混入した異物を実体顕微鏡で観察したところ、色や形状から有機物の可能性が高いと判断し、FT-IR分析を行いました。また、混入の可能性が考えられる注射針の潤滑油とバイアルゴム栓も併せて測定しました。

 分析の結果、測定したスペクトルを比較検討したところ、異物と注射針の潤滑油のスペクトルが一致しました。

 以上の結果から異物は注射針に塗布している潤滑油と判断することができました。

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 外部滑沢用の噴霧機能を有した打錠機で実施した実験品①と実験品②の処方評価をEPMAのマッピング分析で行いました。

 各分析結果のレイアウトは、上半分は観察像で、この観察した箇所をマッピング分析した分析結果を下半分に表示しております。マッピング分析結果は、滑沢剤成分のマグネシウム元素の濃度を示しており、Color Barの白色に近いほど高濃度であることを示しています。逆に青色に近いほど低濃度であることを示しています。今回の分析結果から実験品①(左右下側のマッピング分析結果)は、実験品②(左右下側のマッピング分析結果)に比べて、水色~黄緑色部分のマグネシウム元素の濃度が高く、滑沢剤が多く付着していることがわかりました。このように分析手法によって製造処方の最適化や製造の安定化と品質の評価を行うことができます。

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 苦みのある主薬に対する苦味抑制処方を改良した抗生物質製剤に対して、客観的な証明を行うため、EPMAのマッピング分析で改良前後を比較しました。

 分析結果のレイアウトは、上半分は観察像で、この観察した箇所をマッピング分析した分析結果を下半分に表示しております。マッピング分析結果は、主薬成分の硫黄元素の濃度を示しており、Color Barの白色に近いほど高濃度であることを示しています。逆に青色に近いほど低濃度であることを示しています。

 今回の分析結果から改良後(右下のマッピング分析結果)は、改良前(左下のマッピング分析結果)と比べて、黄緑色~赤色部分の硫黄元素濃度が著しく低下し、主薬が表面に露出していないため苦味が抑制されていることが視覚的に確認できました。また溶出試験結果においても改良後は溶出速度が遅く、服用直後は溶けにくいことがわかりました。

 以上のことからマスキング処方の改善による苦味抑制効果を証明することができました。

 シオノギファーマ株式会社は、お客様から信頼される 「技術開発型モノづくり企業(CDMO*)」 となることをミッションとして掲げ、2019年4月1日より事業を開始しました。原薬の製造法開発および製剤処方開発から商用生産に加え、分析法開発や医薬エンジニアリング技術による設備設計サポートなどを含めた 「フルレンジサービス」 をワンストップでご提供できる体制を整えております。

*CDMO:Contract Development Manufacturing Organization