2020/10/13

高薬理活性原薬の製造設備について
~徳島工場の高薬理活性原薬棟のご紹介~

 

 少量で人体に強い薬効を与えるものを高薬理活性物質といいますが、医薬品にはこのような高薬理活性物質がよく用いられます。作業者保護・環境負荷への配慮・交叉汚染抑止の観点から、このような物質を安全に製造できる設備の需要が昨今増大しています。

 シオノギファーマ株式会社(以下、シオノギファーマ)徳島工場の高薬理活性原薬棟は、ハザードレベル5(OEL*1 0.1~10μg/m3)に対応できる、FDA等の海外当局による査察経験のある製造設備棟です。合成設備と粉砕設備の2系統により異品種同時生産が可能で、1~10kg/Lot程度の高薬理活性原薬および治験用原薬のGMP製造が可能です。製造量が比較的少ない高薬理活性物質の製造施設をお探しのお客さまに好適です。

*1 Occupational Exposure Limit 作業者暴露許容限界

 

2重のバリアシステムの概要

 化学物質に暴露する場合のリスクは、化学物質の有害性と暴露量の掛け算になります。各粉体取り扱い操作のリスクに応じた管理レベルの設定を行い、1次バリア、2次バリアの2重のバリアシステムを構築しています。

1次バリア:コンテインメント(封じ込め)設備(発塵元を局所で封じ込める陰圧アイソレーターなど)

2次バリア:排気HEPA*2フィルター付の陰圧管理された部屋(コンテインメント設備を取り囲む環境)

*2 High Efficiency Particulate Air Filter 高性能エアフィルター

 

(1)1次バリア(コンテインメント設備)

 高薬理活性原薬棟のコンテインメント設備の概要を紹介します。特に発塵のリスクの高い作業、例えば乾燥、粉砕工程での結晶の取り扱いや秤量小分けなどは、陰圧のアイソレーター内で行うことにより、高度な封じ込めを実現しています。

 また、高薬理活性物質を取り扱うためPAT*3によるインラインモニタリング(晶析工程、粉砕工程)を積極的に採用し高度な品質保証を実現しています。

*3 Process Analytical Technology リアルタイムな計測により医薬品の製造工程の設計、分析、管理を行い最終的に製品の品質を保証するシステムをいう。

 

 

乾燥粉体の取り扱い作業

 

・アイソレータ―を採用:内圧陰圧制御(-150Pa程度)
・給排気HEPAフィルター(排気のみ2重)
・バグイン、バグアウトによる物の搬出入
・WIP、CIP対応
   (WIP: Wet in place、CIP: Cleaning in placeの略)

仕込み用グローブボックス(アイソレーター)
glivebox

 

 

湿潤粉体の取り扱い作業

 

・シングルユース技術を採用 → 交叉汚染リスクの減少

・洗浄バリデーションが不要 → 作業者/分析タスクの削減

・視認性、可撓(かとう)性*が良い → 良好な作業性

(*曲げたり、撓み(たわみ)を持たせることができる性質)

仕込み用ソフトアイソレーター
softisolator
PAT機器(In-line粒度分布測定)
PAT
monitor

晶析工程のインラインモニタリング

・PAT機器(In-line粒度分布測定,粒子画像測定)を晶析機に付設、サンプリングによる抜き取り作業の低減と高度な品質保証を実現しています

 

 

晶析スラリーの分離作業

 

・難ろ過性の晶析スラリーに対応した横型タイプの遠心分離機を採用(機械部分をクリーンルーム外に設置)

・ケーキの自動掻取り機能(バスケットを開放することなくケーキの自動排出可能)

・湿潤結晶排出口は、ライナーチューブと高次封じ込め用クリンプを採用

横型遠心分離機
centrifuge

 

晶析スラリーのろ過・乾燥作業

 

・結晶の取り出し部のみをアイソレーターで封じ込め

・ろ過乾燥機の特徴

①   ろ板も伝熱面であり良好な伝熱性能により高効率乾燥を実現

②   撹拌羽根つきであり結晶の均一化を実現

③   自動排出後に残存した結晶をグローブ操作で回収することで高収率を実現

ろ過乾燥機(結晶取り出し部のアイソレーター)
isolator
カウンタージェットミル (粉砕アイソレーター)
Counter jet mill
秤量・小分けアイソレーター(奥側)
isolator2

乾式粉砕作業

・封じ込めに対応したカウンタージェットミルを採用

・窒素雰囲気下での乾式粉砕が可能(防爆対応)

・PAT機器(In-line粒度計)を付設し高度な品質保証を実現しています

・有機溶剤によるWIP、洗浄にも対応

・粉砕アイソレーターと秤量・小分けアイソレーターを連結し、封じ込め環境下での粉砕~秤量・小分け、原薬の収缶までの一連の作業を可能にしています。

(2)2次バリア

 1次バリアで局所封じ込めを実現していますが、何らかの理由で1次バリアからの漏洩があった場合においても、2次バリアとして製造にかかわる全ての部屋を陰圧で制御し封じ込めます。これらのコンテインメント設備を取り囲む環境にある各部屋の空調では、吸排気口にHEPAフィルターを設置し、全外気空調(オールフレッシュ)を採用しています。特に乾燥粉体を用いる部屋では、排気口のHEPAフィルターを2段とし、作業者が安全に交換作業をできるようにバグアウト方式を採用しています。

 2次バリアの例として粉体を取り扱う部屋(クリーンルーム)に付帯した更衣室、パスルームのレイアウトを図で示します。

2次バリアの例
example

 人の動線は、青色の矢印で示しています。入室と退室の動線を分離した、One-Way更衣です。作業者は、これらの動線にしたがって更衣を行い、粉体を取り扱う部屋に入退室します。また物の動線は、黄色の矢印で示しておりDual-Wayとなっています。各部屋の気流(赤色の矢印)や差圧の関係は、図で示したように、着脱衣室、パスルームを最も高い室圧とし、粉体を取り扱う部屋に向かう気流となっています。これらの特徴的なレイアウトにより、高薬理活性物質の封じ込めを最優先に考慮した2次バリアとクリーンルームの要件を両立した設計を実現しています。緑のラインがハザードとノンハザードの境界で、着脱衣室、前室は高活性物質を持ち出さないコンセプトで実運用をしています。

 

コンテインメント設備の性能評価

 測定方法、サンプリングポイント、分析はISPE(国際製薬技術協会)より発刊されているSMEPAC*4に基づき、模擬粉(ラクトース)を用いたコンテインメント設備における1次バリアの性能評価を実施しています。また、実粉に対しては交叉汚染防止や環境保護の観点から2次バリア外や排気系統も対象を広げて粉塵飛散モニタリングを実施しています。

 なお、シオノギファーマでは製造受託のみならず、お客様の高薬理活性物質を取り扱う施設の設計支援やリスクアセスメントなどのコンサルティング、暴露評価/粉塵飛散量測定等の分析サービスも提供していますので、ぜひご利用ください。

*4 Standardized Measurement of Equipment Particulate Airborne Concentration
の略

 

徳島工場 高薬理活性原薬棟の主要機器

list

 

 シオノギファーマは、お客様から信頼される 「技術開発型モノづくり企業(CDMO*6)」 となることをミッションとして掲げ、2019年4月1日より事業を開始しました。原薬の製造法開発および製剤処方開発から商用生産に加え、分析法開発や医薬エンジニアリング技術による設備設計サポートなどを含めた 「フルレンジサービス」 をワンストップでご提供できる体制を整えております。

 徳島工場では、治験用原薬・中間体、医薬品原薬・中間体の製造受託を行っており、少量から大量までのスケールの製造に対応可能です。お客様のご要望に応じた受託サービスやソリューションサービスの提供を行っていますのでお気軽にご相談ください。

*6 CDMO:Contract Development Manufacturing Organization